月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
「ワンッ!」
訓出のそばで、柴犬のマチノが吠える。マチノは桐杏やその家族と一緒に暮らしている犬だ。マチノは桐杏に会おうと、訓出について来たようである。
「訓出、どうしたの?」
桐杏は弁当を置いて、すっくと立ち上がって、着物についた砂を手でさっと払う。マチノの前でしゃがんで、愛情をしめすように、両手で彼の赤茶色のからだを撫でた。
「判大狗さんの容体がよくないんだ。今すぐ来てくれって」
判大狗はこの島の長である。桐杏は訓出とマチノとともに、すぐさま下山した。