月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
判大狗の住む家は船だまりの近くにある。桐杏と訓出が家の中に入ると、判大狗は寝室の敷き布団に寝ていた。高熱のために苦しそうな声を立てている。
病人の判大狗を診ているのは、医師の阿村だった。阿村はこの島の唯一の医師で、桐杏の父でもある。年齢は三十三歳。医師は世界的に見ても高禄とされているが、人助け優先の阿村はその日その日を家族とともにどうにかこうにか暮らしていた。
「判大狗さん」
桐杏は判大狗のそばに座って、彼の細く浅黒い手を握る。男性の平均寿命が五十歳のこの国で、判大狗は現在七十二歳と、長命だった。老齢の判大狗の前頭部から後頭部にかけての髪はすべて抜け落ちている。側頭部の髪はすべて白く、毛量は少なめでぱさついていた。