月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ


 寧丸は桐杏の体に興味をしめそうともしない。


「このままでは風邪をひく。なにか着るものを持ってくるから、待っていて」


 桐杏にそう言うと、立ち上がって、部屋を出る。桐杏にとって、彼の行動のすべてが予想外だった。少しして、自分が着ていた物なら部屋の外に置いてある、と寧丸に言えなかったことに気がつく。


「これを着て。その間、私は後ろを向いているから」


 戻ってきた寧丸は、高価そうな着物や下着を桐杏に差し出す。桐杏は寧丸の後ろ姿を見ながら、それらの衣類を身につけた。桐杏が着物姿になると、ふたりはふたたび向き合う。


「あの、どうして私に優しくしてくれるのですか?」


「私は夜伽者の制度には反対なのだ」


「えっ」


「男の欲望のはけ口にするなんて、ひとりの女性の権利を無視している。これでは国民から支持されるわけがなかろう」


「うっ、うっ」


 その言葉に胸のつかえが取れた桐杏は、声に出して泣いた。
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