月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
「作り話でなくてよい。そうだ、私に島の話を聞かせておくれ。私は桐杏がこれまでどんな人生を送ってきたのか、興味がある」
「……」
桐杏はまず、寧丸に自分の家族の話をした。
「私が十二歳の時に、生まれたばかりの子犬を島の漁師から一匹もらったのです。私は彼をマチノと名づけました」
マチノも桐杏の大事な家族だ。寧丸は時折うん、うんとうなずきながら、桐杏の身の上話をうれしそうに聞いていた。
桐杏は話している途中で、寧丸の左手の甲にすり傷があることに気がつく。
「大変。寧丸さまはけがをしているではありませんか」
両手で彼の手を持った。
「ああ、昼間、乗馬している時に。なに、医療班に看てもらうこともないほどの、たいしたことはない傷だ」
「私なら、今すぐに治せるかもしれません」
寧丸は桐杏の言葉にきょとんとしている。