月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
「おお、桐杏。私の好きな音楽を奏でておくれ。『私を起こす愛』だ」
判大狗は片目を開けて言う。桐杏は自分の能力を生かすように、幼い頃から作曲を趣味としている。そして、判大狗は桐杏の作った曲を気に入っていた。
桐杏はすぐに部屋の窓を開ける。まぶたを閉じて、集中した。庭の木にはあっという間に小鳥たちが集まってくる。小鳥たちは桐杏が十二歳の時に作曲した『私を起こす愛』を声で奏でた。それは朝の目覚めの曲として作った曲だが、病気の判大狗を癒すのにぴったりの曲となる。
部屋じゅうに、科学では説明しようのない音が響き渡った。陽気だけれど、どこか哀愁をおびた旋律だ。
それを聴いていた判大狗の表情はたちまちやわらぐ。阿村はすかさず判大狗の脈をはかった。
「体温が下がっている」
彼が学んだ医学と桐杏の能力は相反するものである。阿村は医師として、人間の急激な体調の変化に驚く。