月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
「この曲はフルハ島の伝統音楽かなにかか?」
「いえ、私が作曲したものです」
「なんと! 他の者に同じ能力があったとしても、そなたのように美しい旋律を考え、奏することはできないだろうな。桐杏、そなたはまぎれもない天才だ。その正体は音楽をつかさどる女神なのだろう」
「めっそうもございません……」
桐杏は寧丸のほめ言葉に、うつむく。同時に、自分の中にあるひとつの思いを思い出した。
「私はこの能力を医療に役立てたいと思っています」
「医療?」
「従来の治療とあわせれば、多くのけがや病気を治せるのではないかと。私はそれを音療と名づけました」
「音療か。実にすばらしい考えだ」
寧丸は桐杏の髪を撫でる。
「自分の夢は家族にも、幼なじみにも言ったことがないのに。寧丸さまにはなぜだか言える」
桐杏としても、ふしぎだった。初めて会ったばかりなのに、どうして、と。