月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
その夜。桐杏はろうそくに火をつけずに、月明かりだけをたよりに家の中で過ごしていた。寧丸が自分から言ったことを忘れていないならば、今夜も役人に呼ばれるはずだ。そろそろ役人が来ると感じていた時、家の開き戸を叩かれる。
「桐杏」
訪ねてきたのは寧丸だった。付き添いはおらず、彼ひとりだけのようである。
「寧丸さま!」
桐杏は彼を家の中へ入れた。すぐさまろうそくをともす。
「厳重な警備の屋敷を抜け出すのは大変だったよ。なにせ、夜間にひとりで外出など、私の十六年の人生で初めてのことだから。私は自分が思っていたより、まじめで従順に生きていたようだ」
「呼べば、こちらから会いに行きましたのに。ここまで来るのに、遠かったでしょう?」
「そうすれば、桐杏はまた裸にさせられるだろう? 私には堪え難い。それに、私が桐杏を頻繁に呼べば、不審に思われる。だから、私がこうしてこっそり来る方がよいのだ」