月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ
しばし、ふたりは見つめ合う。出会って二日目でそれほど言葉を交わしていなくとも、ずっと前からこんな関係だったかのような、互いにそんな気持ちとなっていた。
日ごとに、桐杏は寧丸に惹かれていく。彼とどうなりたいのかは、桐杏自身にもわからなかった。自分のような身分の低い人間がそれ以上望んではいけない、という気持ちで、おさえているのかもしれない。
「桐杏、今からそなたの演奏を聴かせてくれぬか。私はそなたの作る曲が好きだ」
寧丸が言う。寧丸のその笑顔は桐杏の心に生まれた切ない気持ちをかき消した。
ふたりはすぐに家を出る。自然や動植物たちの奏でる音が周囲に響き渡った。寧丸は桐杏の曲に惚れ込み、絶賛する。桐杏はそれだけでこれ以上ない幸せを感じていた。これが自分のすべてだと。