月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ


「俺、早く医者になるから。今は桐杏の父ちゃんの負担が大きいもんな」


 訓出は自分の夢を語る。彼は幼い頃から阿村にあこがれていた。資格をとるために医学書を読みあさったり、阿村に病気やけがを治すための技術を教えてもらったりしている。


「ありがとう」


 桐杏はそこで、私はどうだろうと、自分の夢について考えた。


「訓出、あのね、私――」


 訓出のようになりたい職業は明確にないが、自分の能力を人の役に立てたいと思っている。音楽には心だけでなく体を癒す力があると信じていた。それを音療(おんりょう)と名づけている。桐杏は自分の夢を訓出に伝えようとした。


「ん? どうした?」


 けれども、気持ちがそれを阻止する。どうしてかは、桐杏自身にもわからないでいた。


「ううん、なんでもない。そろそろみんなのところへ戻ろうか」


 桐杏はその場を離れようとする。場所を移しても、桐杏の口から音楽で医療にたずさわりたいという信念が出ることはなかった。
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