月色の部屋で、第三夜伽は皇子の愛を待つ


 宴がはじまって二時間が経った頃。桐杏は最後の演奏者として高台にあがった。最後に出演するということは宴の主役を意味している。


「桐杏!」


 それと同時に、歓声がわきおこった。この島でいちばんの美人で、島で初めての高等能力者。そんな桐杏は島の宝であり、人気者だ。桐杏はまず『私を起こして』を演奏する。宴で初めて演者をまかされた時は照れくさかったが、今では自分の役目に感じていた。


 島民たちは桐杏の曲に合わせて陽気に踊ったり、フルハ島を象徴する旗を振る。阿村や訓出も手足を使って踊った。君火や桐杏の妹の璃社(りしゃ)は旋律に合わせて頭を小さく振る。


 桐杏はこれまで作曲したすべての曲を演奏した。最後に曲を作ったのは一年以上前で、全部で五曲と、数は多くない。
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