政略結婚した顔も知らない夫に気づけば溺愛されていたようです~御曹司は甘く攻めて逃がさない~
ピンクの折り紙で小さな折り鶴を折る。折り鶴は祖母に作り方を教えてもらった。不器用でなかなかうまくできない私に根気強く教えてくれたのをふと思い出した。
ひとつ折り終えて、月城様の様子を見る。さっきから体勢は変わっていない。大きな体なのでソファでは窮屈そうだ。
月城洸也(こうや)さんはこちらのスイートルームを年間契約されている。いわゆるVIP客だ。
海外生活が長く、日本での住居を定めるまでここに住んでいると聞いた。なかなかいい物件が見つからないのか、ここに住んでもう三カ月が経つ。
最初彼がこのグレースカメリア東京に現れた時、女性スタッフは色めきだった。もちろんみんな態度には表さないが、バックヤードはお祭り騒ぎだった。
それはそうだろう。普段あまり男性に興味のない私でさえ目で追ってしまうほどのカッコよさだ。
身長は百八十センチを超え、手足が長く、外出時はスーツをモデルのごとく着こなしている。ホテル内で過ごすラフな服装も清潔感があり、正直なにを着ても似合う。
それに加え、あの男らしく整った顔立ちだ。神様の最高傑作だと言ってもみんな頷くだろう。
人柄も人格者だともっぱらの評判だ。私たちスタッフにも横柄な態度を取ることなく、いつも紳士的なふるまいで評判がいい。
少し前、ホテルスタッフと外国人のお客様との間にいざこざがあった際、彼が間に入って仲裁してくれたこともあったそうだ。無用なトラブルを避ける人が多いが、彼は率先して助けてくれたと聞いた。
それまでもスタッフの間での評判はよかったものの、この件で彼の好感度は爆上がりした。もちろん私の中での月城様への認識も〝素晴らしい人物〟となった。
長期滞在ということで、生活スタイルなどの細やかな情報が共有されていて、他のお客様とは違い、コンシェルジュが様々な対応をしている。
常備する水の銘柄、レストランなどの予約、備品の手配、ありとあらゆるリクエストに応える。
三つ目の鶴が出来上がった頃、部屋にノックの音が響いた。
扉を開けると、男性が立っている。彼は確か月城様の秘書だ。様々な手続きを彼が代行してやっているので間違いないだろう。
「すみません、月城がご迷惑をおかけしたみたいで。あ、失礼いたしました。月城の秘書をしております、竹野(たけの)と申します」
「竹野様――」
「いえ、私には〝様〟は必要ありません。堅苦しいのは苦手なので」
「では竹野さん。私は客室係の鈴木です。月城様の具合が悪そうでしたので、お部屋までお戻りになるお手伝いをしました」
薬を飲んだ時間を知らせて、もし必要なら医師の手配もできることを再度伝える。
「冷たいおしぼりなど必要でしたらお持ちしますが」
先ほどから月城様の額に汗が浮かんでいる。熱が出てきたのかもしれない。本人はぐったりしているので、竹野さんに尋ねる。こういう場合どうすればいいのか、秘書の竹野さんなら知っているかもしれない。
「そうですね、できればお願いしたいです」
「かしこまりました。すぐに準備してまいります」
私は一度部屋を出て、氷嚢と冷たいおしぼりを準備して戻った。
いまだにソファから動けない月城様は呼吸も荒く苦しそうだ。
早くよくなるといいなと思いつつ、私はその場を辞そうとする。
ひとつ折り終えて、月城様の様子を見る。さっきから体勢は変わっていない。大きな体なのでソファでは窮屈そうだ。
月城洸也(こうや)さんはこちらのスイートルームを年間契約されている。いわゆるVIP客だ。
海外生活が長く、日本での住居を定めるまでここに住んでいると聞いた。なかなかいい物件が見つからないのか、ここに住んでもう三カ月が経つ。
最初彼がこのグレースカメリア東京に現れた時、女性スタッフは色めきだった。もちろんみんな態度には表さないが、バックヤードはお祭り騒ぎだった。
それはそうだろう。普段あまり男性に興味のない私でさえ目で追ってしまうほどのカッコよさだ。
身長は百八十センチを超え、手足が長く、外出時はスーツをモデルのごとく着こなしている。ホテル内で過ごすラフな服装も清潔感があり、正直なにを着ても似合う。
それに加え、あの男らしく整った顔立ちだ。神様の最高傑作だと言ってもみんな頷くだろう。
人柄も人格者だともっぱらの評判だ。私たちスタッフにも横柄な態度を取ることなく、いつも紳士的なふるまいで評判がいい。
少し前、ホテルスタッフと外国人のお客様との間にいざこざがあった際、彼が間に入って仲裁してくれたこともあったそうだ。無用なトラブルを避ける人が多いが、彼は率先して助けてくれたと聞いた。
それまでもスタッフの間での評判はよかったものの、この件で彼の好感度は爆上がりした。もちろん私の中での月城様への認識も〝素晴らしい人物〟となった。
長期滞在ということで、生活スタイルなどの細やかな情報が共有されていて、他のお客様とは違い、コンシェルジュが様々な対応をしている。
常備する水の銘柄、レストランなどの予約、備品の手配、ありとあらゆるリクエストに応える。
三つ目の鶴が出来上がった頃、部屋にノックの音が響いた。
扉を開けると、男性が立っている。彼は確か月城様の秘書だ。様々な手続きを彼が代行してやっているので間違いないだろう。
「すみません、月城がご迷惑をおかけしたみたいで。あ、失礼いたしました。月城の秘書をしております、竹野(たけの)と申します」
「竹野様――」
「いえ、私には〝様〟は必要ありません。堅苦しいのは苦手なので」
「では竹野さん。私は客室係の鈴木です。月城様の具合が悪そうでしたので、お部屋までお戻りになるお手伝いをしました」
薬を飲んだ時間を知らせて、もし必要なら医師の手配もできることを再度伝える。
「冷たいおしぼりなど必要でしたらお持ちしますが」
先ほどから月城様の額に汗が浮かんでいる。熱が出てきたのかもしれない。本人はぐったりしているので、竹野さんに尋ねる。こういう場合どうすればいいのか、秘書の竹野さんなら知っているかもしれない。
「そうですね、できればお願いしたいです」
「かしこまりました。すぐに準備してまいります」
私は一度部屋を出て、氷嚢と冷たいおしぼりを準備して戻った。
いまだにソファから動けない月城様は呼吸も荒く苦しそうだ。
早くよくなるといいなと思いつつ、私はその場を辞そうとする。