ずっと片思いしていたエリート外科医の溺愛は妄想と違いすぎました。
「じろじろ見てどうしたの?」
「あっ! ああいやその、綺麗だなって」
「誉めてるって事でいい?」
「もちろんです!」 

 まじまじと見降ろされると、胸の奥が更にきゅっと引き締まる。苦しさにも似た感覚なのに不思議とのめりこみそうになるばかりだ。

(この感覚……やっぱり、先輩が好きだからなのかな……?)
「ごめんなさい、私長居しすぎちゃって……すぐ帰りますから……!」

 これ以上迷惑をかける訳には行かないのでと言って起き上がろうとすると、秀介に待って。と左手首を軽く掴まれた。
 彼のしなやかな枝のような指が、己の手首に絡みついている。その事実が咲良の思考回路を止めるのにさほど時間はかからなかった。

「話があるんだ。でも、とりあえずご飯食べよっか。お腹空いただろ?」
「えっあっ春日先輩手伝いますよ!」
「中崎さん料理できるの?」
「とりあえず一通りは……」

 そっか。とはにかむ秀介を見て、このまま時が止まらないでほしいと咲良は願う。
 彼の全身があらわとなり黒いボクサータイプの下着が視界に入ると、よかった……と胸をなでおろしたのだった。

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