ずっと片思いしていたエリート外科医の溺愛は妄想と違いすぎました。
 と言いつつも彼が与えたキスは咲良が妄想するよりも激しいものだった。唇を塞がれると奥に引っ込んでいた舌に絡みつき、じゅるじゅると淫らな水音が響き渡る。

「んんんっ……!」
「んっ……」
「むっ……! ぷはっ! せん、せんぱい! 朝から激しいですよ……!」
「ははっ可愛いからついしたくなった。あとこれ食事代、もし食材買うなら今日の分だけでいいから。帰るときまた連絡する」

 火照った身体と震える手つきのまま食事代の5000円を受け取る。そしていってらっしゃい。と笑顔の秀介へ手を振った。
 ばたんと扉が閉まると家には咲良だけとなる。皿洗いをした後はリビングのソファに腰かけると静かな空気が広がっていくのを感じた。

「何か、しようかな……」

 スマホで転職サイトを検索し、登録。適当に求人を眺めていくもののこれと言ってピンとくるものはない。

「ん~……やっぱり根気強く探さないとダメかあ。それともハロワ行った方がいいのかな」

 リストラにあった会社は新卒で入社した会社。給料も良く、寮での暮らしも悪いものではなかっただけに、どうしてもハードルの高さをひしひしと感じてしまう。
 それに今は好きな人との同居生活を楽しみたいという純粋な気持ちもあるのだ。

「いっか。でもとりあえず毎日ちらちらサイト見よ。お昼ご飯何にしよう。ってか買い物も行かないとだよね……」

  私服に着替えて秀介の家からエレベーターで玄関ホールへ移動すると、にこにこと笑顔を浮かべている松原の姿が目に入った。

「おはようございます!」
「あっ松原さんおはようございます。中崎……えっと、春日咲良です」
「咲良さんおはようございます。これからお買い物でしょうか?」

 すんなりと言い当てられて驚きつつもはい。と答える。すると松原は白い大理石のカウンターの下からパンフレットを取り出し、咲良に見せた。

「うちはこういった宅配サービスを行っておりまして。春日さんも時々使っていらっしゃるのですよ」

 パンフレットに記された内容を要約すると、某有名なスーパーから週に2~3度食材を取り寄せできる宅配サービスらしい。24時間対応可能で、食材以外にも一部の日用品を取り寄せ可能だとも明記されている。

「へえ~」
「ご注文がございましたら、こちらからお伝えいたしますので」
「良いんですか?! すっごい、至れり尽くせり……!」
「それがこのマンションの強みでもありますから」

 穏やかに笑う松原へ、咲良は注文したい食材を伝える。

「かしこまりました。20分ほどで到着すると思います。また届きましたらご連絡いたしますね。お支払いはその時にお願いします」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 マンションの外に出る事無く買い物を済ませられるのはとっても便利だ。一旦秀介の自宅に戻ると改めて広々としたリビングの天井を見上げる。

「これ、妄想した通りのお金持ちの暮らしって感じだ……」

 
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