ずっと片思いしていたエリート外科医の溺愛は妄想と違いすぎました。
 ふと気になったのでベッドルームの隅に置かれた段ボールから、これまで書いてきた同人誌を取り出した。

「これこれ。う~ん、取っておいて本当に良かった……」

 初めて小説を書いたのは中学1年の時で、そこから初めて同人誌を出したのが高校1年。母親にバレないように嘘をついたり隠したりしながら、妄想を書きなぐっていた記憶が鮮やかによみがえる。
  人生初の同人誌は勿論秀介との妄想を詰め込んだもの。表紙絵は秀介の誕生花であるスズランを色鉛筆で描いたものを使っている。
 なお咲良が社会人になってから出した作品の表紙絵はSNSで活動している絵師さんへ有償依頼をお願いしていたものなので、両者を比べるとクオリティは全然違うのがはっきりわかった。

「絵師さんほんと絵がうまいよねえ。私はここまで描けないや」

 段ボールの中から同人誌をある分だけ出した。水族館デートを楽しむものや、金持ち設定の秀介と、周囲の目線をかいくぐりながらVIP生活を楽しむ……そして超高級ホテルの最上階でプロポーズ。どれもキラキラした妄想が濃縮されている。
 推しキャラの二次創作小説も捨てがたいが、やはり秀介との妄想をつづった作品が一番印象に残る。

「なんだか、現実になっちゃったなぁ。20歳になったら春日先輩と結婚するんだとか書いてあるけど、契約とはいえ本当に結婚しちゃったなんて」

 同人誌を執筆していた当時の状況を思い出しながら、独り言をつぶやいてはぺらぺらとページをめくる。それから松原から宅配が到着したと連絡が来た。

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