ずっと片思いしていたエリート外科医の溺愛は妄想と違いすぎました。
◇ ◇ ◇

「帰ってこない……」

 時刻は19時。外はあっと言う間に日が暮れ、宵闇が空を支配している。何度スマホを見ても秀介からの連絡はない。

「ご飯どうしよっかなあ、もう作ってはあるけど、先に食べちゃおうかな……お昼の残りもあるんだよねえ」

 昼食の残りであるレンチンして蒸かしたかぼちゃを冷蔵庫から取り出し、ご飯をよそおうとした所で手が止まってしまう。

「やっぱり帰って来るの待とう。先輩だって、私と食べた方がおいしいに決まってるはず」

 こんなシチュエーションのストーリーも書いたな。と思い出しながらかぼちゃを再び冷蔵庫へとしまった。
 テレビをつけると、デートスポットランキングと題したエンタメ番組が映し出される。3位は修学旅行で訪れた巨大な水族館、2位は某レジャー施設、そして1位はオープンしたばかりのプラネタリウムと咲良からすればド定番な観光地が紹介されていった。

 だが時間が無情にも経っていく中、秀介からは一向に連絡が来ない。
 彼を心配する感情が次々と湧いて出てきては止まらなくなっていく。

「連絡して、みようか」

 昨日教えてもらったレーインへメッセージを送ろうとするが、指が震えてうまく打てない。それにメッセージを送ってしまうのはかえって迷惑に当たらないかと不安もよぎる。
 結局不安に負けてスマホの画面を閉じてしまった。

「先輩……」

 早く帰ってきて。と本音がぽろりと零れ落ちる。それと同時に目の奥がじわじわと熱くなってきた。
 もとより秀介は外科医。オペなどもあって多忙なのは咲良自身理解しているつもりだった。しかし彼の帰宅が遅くなっている現実に直面した事で、改めてこれが医者の妻なのかと認識させられてしまう。

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