ずっと片思いしていたエリート外科医の溺愛は妄想と違いすぎました。
「これは……?」

 紫色の包み紙は丸い形状で、ふんわりと華やかでフローラルな香りが鼻腔の奥深くまで浸透してきた。

「それ、夫が手作りした石鹸なの。よかったら使ってみてください」

 聞けば佳苗の夫は石鹸づくりが趣味らしい。彼は妻と同じく外科医で、今はアメリカの大学に所属しているのだとか。

「へえ……ありがとうございます。良い匂いがします」
「そうでしょう。石鹸を作る時、いつも匂いにこだわっているから……あ、春日くんもいる?」
「いいんすか? 昨日貰ったばっかですけど」
「いいのいいの。まだ家にたくさんあるから」

 秀介も佳苗から石鹸を貰う。興味深そうに匂いをしきりに嗅いでいる彼の姿を目に焼き付けていると、スーツ姿に黒縁の眼鏡をかけた30代くらいの男性が颯爽と入室してきた。
 彼もまた整った顔立ちをしており、華奢な体型は秀介とよく似ている。

「春日先生! お疲れ様です!」
「矢木さん! お疲れ様です! あ、うちの嫁です」

 再び肩を抱き寄せられた咲良は、わっと小さな驚きの声を上げる。

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