ずっと片思いしていたエリート外科医の溺愛は妄想と違いすぎました。
◇ ◇ ◇

「ん……」

 瞼に光が差し込んできているのに気が付いた咲良がゆっくりと目を開くと、彼女の理性からすれば知らない内装が飛び込んでくる。

「……ここどこ?」

 真っ白な天井に、丸い照明灯が光を放っている。身をゆっくりと起こすと、頭ががんがんと痛い。
 周囲にはふかふかのキングサイズのベッド。幼稚園児程の大きさがあるヤシの木みたいな観葉植物にシンプルな黒いデスクがあるのが見える。

「起きた? っておい、服くらい着といた方がいいだろ」

 左側の扉がゆっくりと開かれると、そこにいたのは秀介だった。白いトレーナーに黒いジャージ風のズボンと如何にもな部屋着を纏っている。
 そして咲良はここで、自分が着ているのは下着だけなのに気が付いた。

「え?! え、あの、春日先輩?! ちょ、これってどういう……!」
「俺が聞きたいわ。ってか覚えていないの?」
「ま、全く……」
「はぁ。昨日あれだけ暴れておいてその反応か。って事は本当に覚えてないのな」

 呆れてため息を吐き出される秀介だが、そんな彼を見ても咲良は戸惑いしか感じられない。

「あの、私、なんでここに……」
「とりあえず昨日、酔ってた君を家に連れてきたんだ。そしたらまあ……君がめちゃくちゃ酔っていたせいか色々あって。言っておくが君には手を出していないからな?」

 複雑な顔色を覗かせる秀介が視界に飛び込んできた瞬間、咲良は全てを理解した。脳天に雷が落ちてきたかのような、衝撃がとどろく。

「あ、もしかして……ご迷惑をおかけしてしまいましたか……?」
「ああ、うん……いや、迷惑ではないが、驚いたな。あんなに積極的だったなんて」
「せ、積極的?!」

 お酒のせいとはいえあまりの衝撃的な展開を受け入れる事が出来ず、頭を抱える。だが秀介はというとゆっくりと歩を進めて咲良の左隣に近寄ってきた。

「あとこれ……君の荷物勝手に整理してたら出てきたんで読んでみたんだけど」
「え」

 秀介が手にしているのは、咲良の妄想がぎっしり詰まった同人誌。表紙には秀介そっくりの男子高校生がカッターシャツと黒いズボンの制服を着た姿が描かれている。
 なお、この制服は秀介と咲良が通っていた高校のものとほぼ同じだ。

「これ、俺だよね?」

 
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