私の生きる理由 ~君の鼓動に、永遠の愛を誓って~
 かつて園子と結婚した時、そこには「愛」など欠片もなかった。
 会社のための政略結婚。園子の猛アタックに流され、心が動かぬまま式を挙げた。初夜も別々の部屋で過ごすつもりだったが、園子が押し掛けてきた。
 情事の最中も、桜介の心は冷めきっていた。気づけば眠ってしまい、朝になると園子は「最高だったわ」と満足げに笑っていたが、桜介には虚無感しか残らなかった。
 自分はずっと、自分の心に嘘をついて生きてきたのだ。

(…もう、嘘はつきたくない)

 桜介は顔を上げた。
 まずは、彼女を探さなくてはならない。


 その日の午後。桜介は天城グループ傘下の清掃会社へ連絡を入れた。
 電話口に出た担当者は、澪音の個人情報については頑なに口を閉ざした。

「申し訳ありません、社員のプライバシーに関わることは…」
「個人情報を聞き出したいわけではありません!ただ…お礼が言いたいのです」

 桜介は食い下がった。

「彼女がいつも社内に飾ってくれていた花が、とても綺麗で…社員たちも、彼女に感謝しているんです。特に、白百合の花が」

 受話器の向こうで、担当者の息を呑む気配がした。

「…そうでしたか。あの方は、白百合が一番お好きでしたから……」

 担当者の声が少しだけ和らいだ。

「わかりました。…もし、また天城様と連絡が取れましたら、必ずお伝えします。『また必ず会いましょう』と」
「はい…お願いします。必ず」

 電話を切った後、桜介の胸には不思議な温もりが残っていた。
 まるで、遠くにいるはずの澪音が、そばで微笑んでくれているような気がした。

 だが、その穏やかな時間は長くは続かなかった。

 翌日、桜介の元に一通の招待状が届いた。
 差出人は『ミシェルナ・グループ』。
 そして直後、園子から直接電話がかかってきた。

『今週末のクリスマスパーティーで、私との復縁を宣言しなさい』

 受話器から聞こえる声は、悪魔の囁きそのものだった。
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