私の生きる理由 ~君の鼓動に、永遠の愛を誓って~
「…ふざけるな」
桜介は低く唸った。
自分の誇りである会社を、汚らわしい欲望で汚そうとする元妻。
そして何より許せないのは、彼女が再び自分の人生に土足で踏み込んでくることだ。
「社長。この提携、断固として拒否します。たとえ相手が誰であろうと、俺の目の黒いうちは、会社を一ミリたりとも傷つけさせない」
桜介の瞳に、久しぶりに熱い光が宿っていた。それは憎悪という名の炎だった。
怒りで煮えくり返る頭を冷やすため、桜介が向かったのは、会社から少し離れた場所にある霊園だった。
母・京華が眠る場所。
ここだけが、彼が唯一、仮面を外して素顔になれる聖域だった。
夕暮れの風が、木々を揺らす。
桜介は母の墓石の前に立ち、静かに手を合わせた。
「…母さん。また、嵐が来そうだ」
心の中で語りかける。
園子の帰還と会社の危機。
張り詰めていた糸が切れそうになる時、彼はいつも母に救いを求めていた。
ふと、墓前の花立に目が留まる。
そこには、誰も手向けたはずのない花が生けられていた。
一輪の、凛とした白百合。
「……これは」
桜介は驚きに目を見開いた。
白百合は、母がもっとも愛した花だ。
父も自分も、最近は忙しくて墓参りに来れていなかった。親戚も疎遠になっている。
では、誰が?
桜介は花に手を伸ばした。
花びらはまだ瑞々しく、ついさっき供えられたばかりのようだ。
その白さは、どこかで見覚えのある純粋さを湛えていた。
汚れた作業着の中で、一瞬だけ見せた清掃員の瞳。
なぜか、彼女の顔が脳裏をよぎる。
ありえない連想だ。彼女と母に接点などあるはずがない。
だが、桜介の胸の奥で、あの鼓動がまた静かに、けれど強く脈打ち始めていた。
迫り来る元妻の悪意。
そして、白百合を手向けた謎の人物。
すべての役者が揃い、物語は破滅と再生へ向けて加速していく。