不器用なきみは、涙色の明日を描いていく。
 思えば、あのときも、教室は今みたいに騒がしかった。

 みんなの声や物音が重なって、佐伯さんが言ったのが、『赤』なのか『青』なのかはっきり聞き取れなかったんだ。

『あか』と『あお』って言葉の響きがよく似ているけれど、静かなときはちゃんと聞き分けられる。

 でも、賑やかな場所にいると、相手の声が周りの音と混ざってしまって、何を言われたのかわからなくなってしまう。

 一応、佐伯さんに確認しようとは思ったけど――本人はすでにバタバタと自分の作業に戻ってしまったから、聞こうにも聞けなくて。

 それで、『忙しそうだから早くペンキを持って来てあげよう!』と思って、佐伯さんが頼んだのとは全然違う色のペンキを持ってきてしまったというわけだ。

「ごめん、なさい……」

 小声でなんとか謝る私に、佐伯さんは呆れたようにため息をついた。

< 2 / 16 >

この作品をシェア

pagetop