この空の青を、君は知らない
それから、数日が過ぎた。
体の重さは消えきらないまま、時間だけが過ぎていった。
朝、ベッドから起き上がるとき、ほんの一瞬だけ動きが止まる。
廊下を歩いていても、気づかないうちに呼吸が浅くなる。
それでも、日常は続いていく。
何も変わらないふりをして。
気づけば、流星群の日まで一週間を切っていた。
夜風が、ゆっくりと屋上を抜けていく。
並んで腰を下ろしたコンクリートの床は、前よりも、また少し冷たかった。
「遥人……?」
ふいに天音が、心配そうに覗き込む。
「……ん?」
「無理、してない……?」
「してないよ……」
そう言って、頬を緩める。
けれど、天音は一層眉を寄せる。
手元のスケッチブックに視線を下ろす。
けれど、握った筆先はわずかに揺れていて、手に力が入らなかった。
「ねぇ、やっぱり顔色悪いよ」
「平気だって……」
口ではそう言いながら、呼吸のたびに胸の奥が軋む。
それでも、視線を逸らさずに言う。
「だって、もうすぐだろ。流星群」
小さく笑って、いつかの日の天音を真似る。
「体調崩してる場合じゃない」
「もう……」
天音は少し困ったように笑って、空へ視線を戻した。
その横顔を見つめながら、言葉をかける。
「天音こそ、無理すんなよ」
「うん」
隣から聞こえる息遣いだけが、夜に小さく響く。
風が吹く。
さっきまでと同じはずなのに、少しだけ冷たい。
「……今日は、もう戻ろっか」
天音が、ぽつりと呟く。
「そうだな」
立ち上がり、階段へ向かう。
少し前を歩いていたら天音が、ふと振り返った。
長い髪がふわりとなびく。
「約束だからね、流星群」
小さく、小指を差し出す。
「絶対、一緒に見るんだから」
「……ああ」
歩幅を広げて隣に並ぶ。
その細い指に、自分の小指を絡めた。
触れた指先は、思っていたよりもずっと温かかった。
もう一度、強く風が吹く。
夜空には雲が広がり、星が、ひとつ、またひとつと隠れていく。
それでも、
まだ、どこかに残っている気がした。