マジックアワー
接触禁止は、お前ひとりでいいだろ、なんで沙耶まで。沙耶が自分の元から離れてしまうのが恐いか?だったら正々堂々と殴り返してきたらどうなんだ。そういうところなんだよ、俺がお前の気に食わないところは。などと瞬は心の中で毒付いたが、今、瞬ひいては病院の方が弱い立場にあることには変わりない。瞬は渋々その条件を飲まざるを得なかった。
その事件がその後公になることはなかった。
その事件のことは院内でもごく一部の人間しか知らない。瞬が望めば、その病院を継ぐことも出来た。でも瞬は、父親の病院を辞め、医院長の座を姉の旦那に譲ることにした。
沙耶は次の日には転院した。
瞬が病院を去る日。
「瞬くん、辞めちゃうの?」
須藤だけは瞬のことを”瞬さん”ではなく”瞬くん”と呼んだ。
「はい、今までお世話になりました」
「残念だけど、瞬くんが決めたことなら仕方ないね」
「その……ありがとうございました」
須藤は、「私なんかしたっけ」とにこやかに微笑んだ。
瞬は首を振って、再び、須藤に一礼した。
その事件がその後公になることはなかった。
その事件のことは院内でもごく一部の人間しか知らない。瞬が望めば、その病院を継ぐことも出来た。でも瞬は、父親の病院を辞め、医院長の座を姉の旦那に譲ることにした。
沙耶は次の日には転院した。
瞬が病院を去る日。
「瞬くん、辞めちゃうの?」
須藤だけは瞬のことを”瞬さん”ではなく”瞬くん”と呼んだ。
「はい、今までお世話になりました」
「残念だけど、瞬くんが決めたことなら仕方ないね」
「その……ありがとうございました」
須藤は、「私なんかしたっけ」とにこやかに微笑んだ。
瞬は首を振って、再び、須藤に一礼した。