星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
「なにを言われたの?」
「いろいろです。男のくせにハープって笑われることはしょっちゅうでした」
 自分の周りには楽器を学んでいる男の子がいなかったから、それでからかわれるなんて想像もしたことがなかった。

「なんでハープを始めたの?」
「父親がピアニストで、なんでもいいから楽器をやれって言われて。いろいろ試して一番好きになったのがこれだったんです」
 彼は愛おしそうにハープを撫でた。

「野球とかバスケとか、球技は体育でもやらせてもらえなかったから、子供のころは浮いてました」
「指を守るために?」

「同じ理由で料理もやらせてもらえなくて」
「それで今日、初めてだったんだね」

「……ごめんなさい」
 身を縮めて謝罪する彼に、詩季は庇護欲すら湧いてくる自分に気が付いた。

「言いたいことあったらもう全部言っちゃいなよ」
「ありがとうございます。もうたいていは流せるようになったんですけどね。そういえば、詩季さん以外からも吟遊詩人って言われたことがあるんですよ。子供のころ、河原で練習していたとき、犬を連れた女の子が来たんです」
 自分も小さいころに犬を飼っていた、と思い出しながら聞く。
「振り返ったら『吟遊詩人!』って叫んで走って行きました」

 ん? と詩季の頭になにかがひっかかる。
 夕暮れの河原がなぜか頭に浮かんだ。次いで、ハープを弾く少年の姿がありありと浮かぶ。まさか、そんな偶然あるだろうか。
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