星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
「その犬ってチワワ? 時間は夕方だった?」
「よくわかりましたね」
「なんとなく」
 答えながら、口の端がひきつった。

 その女の子は十中八九、自分だ。
 今の今まで思い出しもしなかった。こんな偶然、あるだろうか。

 犬の散歩で河原を歩いていたら、きれいな音が流れて来て思わず足をとめた。
 うっとりと聞きほれていたら、振り返った少年があまりにも美しかったから、恥ずかしくなって「吟遊詩人!」と叫んで走って帰ったのだ。我ながら意味がわからない叫びだ。

「その子は本当はうまいって思ってたんだよ。ほら、子供って素直じゃなかったりするし」
 自分です、とは言い出せず、内心で焦った。
 なんとか自信を取り戻してもらわなくては。こんなに素敵にハープを弾ける彼がスランプで、その原因のひとつが自分なら、なんとしてでも償わなくてはならない。
 詩季はぎゅっと拳を握った。

「まずは気分転換だね。今までダメだったことやってみよう!」
「え!?」
 目を丸くする彼に、詩季は立ち上がった。



 詩季はいろんなスポーツが楽しめる複合型レジャー施設に彼を連れて行った。
 まずはバッティングだ。

「こんなところ、初めて来ました」
「私は学生時代に来た以来かな」
 ふたりでヘルメットをかぶり、隣同士の打席で挑戦する。が、ふたりともろくに当てることができず、笑いあった。
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