星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
 その後はキャッチボールや一対一でのバスケなどをして汗をかき、お昼になったらレストランで一緒にご飯を食べた。
 食後のアイスコーヒーを飲んでいると、絃斗はにこにこしながら言った。

「スポーツって面白いですね。コンクールで優勝できたときくらい楽しいです!」
「優勝!? すごいじゃない」

「過去の栄光ですよ」
「私の過去なんてなにもないよ」
 普通の学生時代、普通の社会人。部活で大会に参加してもレギュラーにもなれず、チームはいつも一次予選敗退だった。

「コンクールって緊張する?」
「しますよ。だからいつも幼馴染に励ましてもらってました。優しくて、本当に素晴らしい女性です。続けてこられたのは彼女のおかげです」

「もしかして初恋?」
「そうです」
 絃斗は頬を赤らめて答える。

「また励ましてもらえたら元気でるかな。会いに行ってみたら?」
「毎日会ってますよ」
 即答に、今は恋人同士なのだろうと思った。

「でも、今回はぜんぜんダメで」
「どうしてだろ」

「調子に乗ってるって、その通りだからです。実力以上に評価されている気がしていたときに評論家にけなされて、僕は逃げてしまったんです。なのに、練習用のハープを持ってきてるなんて、逃げても逃げても逃げられないみたいで苦しいです」
 なにから逃げたのだろう。またコンクールに参加する予定だったのだろうか。
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