星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
「すみません、僕も参加で!」
 大股で歩いて来た絃斗はハープを抱えていた。
 係員が慌てて音楽を止め、会場がざわつく。
 袖に下がった司会の人が係員に「聞いてないよ」と文句を言うのが聞こえた。

 別の係員が慌ててスタンドマイクを持って来て彼の前に置く。
 ぽろんぽろん、と試し引きをすると、観客がさらに彼女らに注目し、退屈そうな審査員がペンをまわすのをやめて彼女らを見守った。

「……いいの?」
 詩季に言えたのは、ただそれだけだった。
 助けに来てくれた。私のせいで彼は苦境にいるのに。
 胸の奥がぎゅっとつかまれたように痛くて、だけど嬉しくて。

「僕が伴奏をするから、思い切り歌って」
 にっこり笑う絃斗に、涙があふれそうになった。小柄で頼りなかった彼が、今はとても大きく見える。

 詩季がうなずくと、彼は正面を向いて弾き始めた。
 慣れないハープの伴奏だったせいか、歌い出しがズレた。が、絃斗はすばやく詩季にあわせる。
 テンポの良さをそのままに透き通ったハープの旋律が耳に新鮮だ。

 観客は応援するように手拍子を始めた。踊り出す子供もいる。
 ハープの独奏部分ではアレンジまで入って、幾条もの流れ星が輝くようだった。

 最後に彼がグリッサンドで締めると、会場からは割れんばかりの拍手が送られた。いつの間にか客が増えており、いっせいに拍手をしている。

 圧倒されて、詩季は動けなかった。
 胸が熱くて、ふわふわした。世界がきらきらと輝き、今なら青空の彼方の星まで見えそうだ。

 慣れた様子でお辞儀をする絃斗に続き、慌てて詩季もお辞儀をした。顔を上げると振り返った絃斗が微笑し、詩季に手を差し出している。
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