星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
「演奏、すごく良かったです」
「ありがとうございます」

 絃斗は慣れた様子でにこっと返し、ハープの入ったケースを背負う。
「もしかして、満星(みつほし)絃斗さんじゃないですか?」
 絃斗は顔をひきつらせた。

「違います」
「でも……」
「違いますから! 行きましょう!」
 絃斗は詩季の手をつかんで走り出し、詩季はわけもわからずついて走った。



 しばらく走った先で、絃斗は立ち止まった。歩道の街路樹に手をついて、はあはあと息を切らせている。
「なんで逃げたの」
 同じように息を切らし、詩季は聞いた。
「だって……」
 それだけを言って、絃斗は肩で息をする。

「拍手、すごかった」
 詩季は答えを待たずに言った。

「僕も久しぶりに楽しかった」
「手拍子、気持ちよかった」

「会場と一体になった感じがありましたね」
「踊り出す子もいて」

「かわいかったですよね!」
 そのままふたりは声を上げて笑った。ただそれだけなのに、爽快感があった。
 ひとしきり笑ったあと、一枚のポスターが目に留まった。市の掲示板に貼られたそれには見知った顔が映っている。
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