星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
「晩ごはんどうする?」
「作ってくれるんですか? ハンバーグがいいです」
 もう帰るとか、お店で食べようとか、そういう返事がくると思っていたから意外だった。手作りをふるまうなんて恋人みたいで抵抗があるが、絃斗は期待に目を輝かせている。

 仕方ない、と詩季は苦笑した。初恋の彼女には許してもらおう。どうせ今日が最初で最後だ。
 車でスーパーに寄って材料を買って帰り、まずは玉ねぎをみじん切りにした。

「僕もやりたいです」
「指を切るといけないからダメ」

「あなたまでそんなこと言うんですか」
 すねる絃斗が、なんだかかわいい。

「その代わり、お肉をこねて。大事な作業よ」
「子ども扱いされてる」

「そんなことないよ」
 くすっと笑ったら、
「絶対そうです」
 彼はなおさらすねた。

「はいはい、じゃあこれお願いね」
 ボールにミンチとみじん切りの玉ねぎを入れて、卵と牛乳にひたしたパン粉と塩コショウを入れる。そのボールをテーブルに置いて、絃斗に使いすてビニール手袋を渡した。

「玉ねぎは炒めておくと辛みが飛んで香ばしさがアップするんだけど、生で作った場合はさっぱりジューシーになるのよ」
 絃斗は手袋をはめた手をおそるおそる入れ、肉をこねた。
「なんかむにゅっとする」
 引きつった彼に思わず笑う。
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