星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
「今日も泊まれば?」
「え!?」

「逃げてて行くあてはないんでしょ?」
「ホテルくらい探しますよ」

「今から? 私はもう一泊くらいかまわないよ。洗濯物は全部洗っちゃったし」
「パンツまで!?」

「それはさっき自分で片付けてたじゃない」
 ハープのケースのサイドポケットをごそごそしていたから、たぶんそれだろう。
 彼は少しほっとしたように、だけど不安そうに眉を下げた。

「僕、一応は男なんですけど……」
「何もしないでしょ? でも明日には出てってもらうよ。私も昼から仕事だから」
 迷うように視線をさまよわせたあと、彼は意を決したように言った。

「じゃあお願いします。何もしませんから」
「なにその言い方」
 詩季が噴き出すと、絃斗は困ったように笑った。
 それから就寝まではテレビを見たりたわいもない話をしたりして過ごした。
 絃斗はその合間にハープの手入れもしていた。

 そろそろ就寝というとき、詩季は言った。
「よかったらベッド使って」
「僕が床で寝ます。女性を床に寝かせるなんてできません!」

「コンサートするほどの人を床に寝かせるのは嫌なんだけど」
 しばらく言い合いをしたのち、詩季が折れた。彼にも男の矜持があるだろうから。

 詩季は毛布を渡し、確認する。
「エアコンの設定は好きにしていいからね。朝は七時起きでもいい?」
「わかりました」
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