星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
 店にある服の中で、シンプルな大人っぽいコーディネートに変えた。かといって淡泊にはならないように、小物でおしゃれ感をアップさせる。
「なにしてるんですか、店長!」
 後輩が慌てる。マネキンから脱がされた服を手に抗議する。

「今季のウリはこれですよ、本部からも通達が来てたじゃないですか」
「でも、しばらくこの路線で行くわ」
「うちはほかにはないデザインがウリなのに……」
 後輩は唖然としていた。が、結局は店長である詩季を立てて引いてくれた。

 その後、目につく場所にある服も全部入れ替えた。
 結果、じわりと客足が増えた。
 二日後にはシンプルな服の発注を増やした。
 若いお客さんが少し減り、年上の女性客が増えた。

「ターゲットの購買層と違うし、店のコンセプトとも違う」
 後輩はあきれていたが、売上は微増した。
「最近、店長変わりましたね」
 後輩に話しかけられ、詩季はにっこり笑った。

「私ね、星を拾ったの」
「星、ですか」

「きれいな星だったわ。ちゃんと空に返したの。それが誇らしくて」
「はあ……」
 後輩はなにかを心配するように詩季を見た。

「やあね、たとえ話よ」
「そうですよね」
 後輩はほっとしたように頬を緩めた。
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