星が歌ってくれるなら ~ハープ奏者は愛をつまびく~
「あなたの得意なのは?」
 ピン、ピン、といくつかの弦をはじいてから、彼はため息をついた。

「やっぱりやめさせてください。今は弾けなくて。今度きちんとお礼をします。連絡先を交換してくれますか?」
 あんまり消沈していたので、なんだか断りづらかった。

 連絡が来たら改めて辞退すればいいか、とスマホを取り出すと、彼もまたスマホを取り出し、電源を入れた。
 その瞬間、けたたましく着信が鳴り響く。

「わわ!」
 慌てて止めようとした彼の指が通話ボタンを押してしまう。

『やっと出た! どこにいるんですか!』
 男性の怒鳴り声は詩季にまで聞こえた。

 絃斗は通話を切る。が、すぐにまた着信。
 迷ったように画面を見つめたあと、絃斗はスマホの電源を切った。

「連絡先はあとでもいいですか」
「出なくていいの?」

「今はまだ話をしたくなくて。……せっかく来たんですし、詩季さんは歌ってみては?」
 どきっとした。仕事では苗字呼びか店長呼びで、男性に名前を呼ばれるなんて久しぶりだ。

「ごめんなさい、慣れ慣れしかったですか? 向こうではファーストネームで呼ぶのが普通だったから」
「向こうって?」
「海外にも仕事で行くんです、僕」
 どんな仕事だろうか。考えながら好きな曲を入れ、絃斗のために音量を絞り、はっとした。
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