危険すぎる恋に、落ちてしまいました。番外編
翌朝。
スマホの画面に表示された短い一文に、美羽は思わず声を上げた。
「……ふふ♪」
『今日は学校行く。』
たったそれだけの文面なのに、胸の奥がぱっと明るくなる。
美羽はいつもより少し早起きして、鼻歌まじりに制服に袖を通した。
(椿くん、もう大丈夫なんだ……よかったー!)
歯を磨きながら、ふと昨日のことを思い出す。
椿の兄――慧。
爽やかで、人たらしで、余裕たっぷりで。
(なんだか……椿くんをそのまま“大人の危ない男”にした感じだったなぁ……)
そんなことを考えているうちに、駅に着いた。
改札を抜けると、見慣れた姿がすぐに目に入る。
壁にもたれ、腕を組んで立っている椿。
朝の光に照らされて、少しだけ大人びて見えた。
「……!」
美羽は自然と足早になり、気づけば駆け寄っていた。
「おはよ!椿くん!」
ぱっと顔を上げて笑う。
「もう身体、大丈夫なの?」
「美羽、はよ。」
椿は少し照れたように目を細めた。
「あぁ。もう平気だ。さんきゅーな。」
その優しい声に、胸がきゅっとなる。
「そっか!よかったぁ……!」
二人は自然に手をつなぎ、並んで歩き出す。
朝の空気は澄んでいて、踏みしめるアスファルトの音まで心地いい。
しばらく歩いたあと、椿がぽつりと口を開いた。
「……昨日さ、」
視線は前を向いたまま。
「あの後兄貴と一緒だったろ。……大丈夫だったか?」
「え?」
美羽は首をかしげる。
「何が?」
椿は眉間にしわを寄せ、少し低い声で言った。
「だから、兄貴だよ。変なこと、されなかったかって聞いてんだけど。」
「あはは」
美羽は思わず笑ってしまう。
「するわけないよー。ちょっと冗談でからかわれたけど~」
その瞬間。
椿の足が止まり、美羽の両肩をぐっと掴んだ。
「……は?」
真剣な眼差し。
「あいつ、何かしたのか?」
「え、ええ!?ちょ、椿くん!?」
美羽は慌てながらも、正直に答える。
「えっと……“僕を好きになってもいいよ”とか言ってたけど……でも冗談だよ!?すぐ笑ってたし!」
椿のこめかみが、ぴくりと動いた。
「……ちっ。兄貴の野郎。」
次の瞬間。
ぎゅっと強く、美羽を抱きしめる腕。
「ええっ!?椿くんんん?!!」
美羽は顔を真っ赤にする。
「ちょ、ちょっと!ここ道の真ん中だよ!?」
「うるせぇ。」
低く、必死な声。
「美羽は絶対ぇ、渡さねぇ。」
胸に顔をうずめる椿の気配に、怒りよりも不安が混じっているのがわかる。
美羽は小さくため息をついた。
「……椿くん?」
そっと身体を離し、つないでいない方の手で、椿のネクタイを引き寄せる。
不意打ちの距離。
「……っ!?」
美羽は背伸びして、椿にキスをした。
ほんの一瞬、確かめるみたいに。
「……私が、ずっと側にいたいのは椿くんだけだよ。」
頬を赤らめながら、まっすぐ見つめる。
「慧さんには、ちゃんとキッパリ断っ――」
最後まで言い終わる前に、また強く抱きしめられた。
「ばーか。」
今度は、少し笑ったような声。
「当たり前だろ。」
美羽は小さく笑って、椿の背中に腕を回した。
「……うん、大好きだよ、椿くん。」
「…俺も。」
朝の光の中。
二人はしばらく、言葉もなく抱き合っていた。
――やっぱり、この人の隣が一番落ち着く。
そんな想いが、胸いっぱいに広がっていた。
スマホの画面に表示された短い一文に、美羽は思わず声を上げた。
「……ふふ♪」
『今日は学校行く。』
たったそれだけの文面なのに、胸の奥がぱっと明るくなる。
美羽はいつもより少し早起きして、鼻歌まじりに制服に袖を通した。
(椿くん、もう大丈夫なんだ……よかったー!)
歯を磨きながら、ふと昨日のことを思い出す。
椿の兄――慧。
爽やかで、人たらしで、余裕たっぷりで。
(なんだか……椿くんをそのまま“大人の危ない男”にした感じだったなぁ……)
そんなことを考えているうちに、駅に着いた。
改札を抜けると、見慣れた姿がすぐに目に入る。
壁にもたれ、腕を組んで立っている椿。
朝の光に照らされて、少しだけ大人びて見えた。
「……!」
美羽は自然と足早になり、気づけば駆け寄っていた。
「おはよ!椿くん!」
ぱっと顔を上げて笑う。
「もう身体、大丈夫なの?」
「美羽、はよ。」
椿は少し照れたように目を細めた。
「あぁ。もう平気だ。さんきゅーな。」
その優しい声に、胸がきゅっとなる。
「そっか!よかったぁ……!」
二人は自然に手をつなぎ、並んで歩き出す。
朝の空気は澄んでいて、踏みしめるアスファルトの音まで心地いい。
しばらく歩いたあと、椿がぽつりと口を開いた。
「……昨日さ、」
視線は前を向いたまま。
「あの後兄貴と一緒だったろ。……大丈夫だったか?」
「え?」
美羽は首をかしげる。
「何が?」
椿は眉間にしわを寄せ、少し低い声で言った。
「だから、兄貴だよ。変なこと、されなかったかって聞いてんだけど。」
「あはは」
美羽は思わず笑ってしまう。
「するわけないよー。ちょっと冗談でからかわれたけど~」
その瞬間。
椿の足が止まり、美羽の両肩をぐっと掴んだ。
「……は?」
真剣な眼差し。
「あいつ、何かしたのか?」
「え、ええ!?ちょ、椿くん!?」
美羽は慌てながらも、正直に答える。
「えっと……“僕を好きになってもいいよ”とか言ってたけど……でも冗談だよ!?すぐ笑ってたし!」
椿のこめかみが、ぴくりと動いた。
「……ちっ。兄貴の野郎。」
次の瞬間。
ぎゅっと強く、美羽を抱きしめる腕。
「ええっ!?椿くんんん?!!」
美羽は顔を真っ赤にする。
「ちょ、ちょっと!ここ道の真ん中だよ!?」
「うるせぇ。」
低く、必死な声。
「美羽は絶対ぇ、渡さねぇ。」
胸に顔をうずめる椿の気配に、怒りよりも不安が混じっているのがわかる。
美羽は小さくため息をついた。
「……椿くん?」
そっと身体を離し、つないでいない方の手で、椿のネクタイを引き寄せる。
不意打ちの距離。
「……っ!?」
美羽は背伸びして、椿にキスをした。
ほんの一瞬、確かめるみたいに。
「……私が、ずっと側にいたいのは椿くんだけだよ。」
頬を赤らめながら、まっすぐ見つめる。
「慧さんには、ちゃんとキッパリ断っ――」
最後まで言い終わる前に、また強く抱きしめられた。
「ばーか。」
今度は、少し笑ったような声。
「当たり前だろ。」
美羽は小さく笑って、椿の背中に腕を回した。
「……うん、大好きだよ、椿くん。」
「…俺も。」
朝の光の中。
二人はしばらく、言葉もなく抱き合っていた。
――やっぱり、この人の隣が一番落ち着く。
そんな想いが、胸いっぱいに広がっていた。