月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 王都の城門が見えたのは、出立から三日目の昼前だった。
 朝日が塔の先端を照らし、白い城壁はまぶしく輝いている。遠くで鐘の音が鳴り、街のざわめきが風に乗って届いた。
 エミリアがかつて暮らしていた王都だが、懐かしさよりも緊張を連れてやって来る。
 馬車が石畳を進み、城門をくぐった。華やかな中庭には花々が咲き乱れ、噴水が陽光を反射してきらめいている。
 素早く伝達がいったのか、宮殿前には侍従や文官たちが並んでいた。歓迎というよりは、好奇から集まったのだろう。追放された元王太子妃と、呪われた第二王子をひと目見てやろうという空気が肌に刺さる。
 事実、ざわめきの中に嘲るような囁きが混じるのが馬車の中にも聞こえてきた。

 「元王太子妃が本当に戻ってきたのか」
 「呪いに取り憑かれた殿下と、その妃……」
 「かの第二王子が乗っているらしいぞ。どんな姿か見ものだ」
 「夜には異形になって本当なのか」

 声のひとつひとつが、花の香に紛れて重く届く。

 「みんな好き勝手に言ってひどいですっ」

 カーリンが息を巻く。眉根を寄せ、見せたこともないような険しい表情だ。
 レオナールの気持ちを考えると、エミリアも胸が苦しい。シルバにもなにを言っているのかわかるのか、警戒するように喉をぐるると鳴らした。
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