月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「それに、レオナール様が……」

 言いかけて唇を噛むと、オセアンヌは目を優しく細めた。

 「あの方があなたを救ってくださったのね」
 「はい。あの方がいなければ、私は……」

 オセアンヌに抱きしめられ、言葉を続けられなくなる。細い指がエミリアの背を撫でた。
 長い沈黙ののち、エリクがふと立ち上がる。

 「おまえが幸せなら、それでいいんだ」
 「お父様、ありがとうございます」

 エミリアがエリクと抱擁を交わしたそのとき、扉の外から足音がした。
 ノックのあとにドアが開き、侍女が恭しく告げる。

 「申し訳ありません。そろそろお時間です」

 もう終わりかと嘆いてもはじまらない。追放された立場の人間が、こうして家族と会わせてもらっただけでもありがたいと思うべきだろう。
 オセアンヌがエミリアの髪をそっと撫でて微笑む。

 「エミリア、もう泣かないで」
 「はい。会いにきてくださってありがとうございました……」

 エミリアは唇に力を込めて涙をこらえ、ふたりに深く頭を下げた。
 扉を出るときに振り返ると、父と母は静かに手を取り合いながら、エミリアを見つめていた。
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