月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「無茶はやめてくれ」
 「ごめんなさい。それで、気になる話を聞いたんです」

 カーリンは頭をぺこりとしてから顔を近づけ、小さく囁いた。

 「最近、この王都の近くで魔獣が出たそうなんです。結構大きな被害が出て、魔法騎士団が出動したとか。城下の人たちもみんな知っているみたいで、宮殿内はその話でもちきりでした」

 部屋に沈黙が落ちた。
 レオナールは静かに顔を上げ、窓の向こうを見やる。遠く、王都の夜空を照らす灯が風に揺れていた。

 「魔獣がここへ……。王都の結界は神殿によって守られてきたはずだ。それが破られたというのか」

 低い声で呟く。
 エミリアは胸の前で両手を組み、眉を寄せた。

 「やはり神殿との関係を断ち切ったことが問題なのでしょうか」
 「断定はできないが、王都に瘴気が迫りつつあるのはたしかだ」

 ふと、レオナールの瞳が遠くを見つめるように揺れた。

 「よくないことが起こるかもしれぬ」

 シルバが足もとで小さく鳴き、尾を揺らす。
 その音に、張り詰めた空気がわずかに和らいだ。
 レオナールはその頭を撫でながら、静かに息を吐く。
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