月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「行こう」

 エミリアはうなずき、そっと彼の腕に手を添える。ふたりの後ろをカーリンがついていく。
 廊下には金の燭台が並び、青い絨毯の上に無数の灯が揺れていた。

 「緊張しているのか?」

 歩きながらレオナールが問いかける。
 エミリアは少しだけ微笑んで答えた。

 「はい。でも、レオナール様が隣にいてくださるなら大丈夫です」
 「ならば、私も心強い」

 レオナールの目元が優しく緩む。

 「おふたりは仲がよろしいですよね。私、お邪魔じゃないですか?」

 カーリンが背後で問いかける。決してからかっている風ではなく真面目だ。

 「やだ、やめて、カーリン」

 振り返ったエミリアは頬を熱くする。レオナールも誤魔化すように咳払いをした。
 やがて、遠くから音楽が響いてくる。リュートと笛の旋律が交わり、祝宴のはじまりを告げていた。
 扉の向こうから、笑い声と杯の触れ合う音が漏れ聞こえる。王と王妃が待つ大広間に足を踏み入れれば、再び王都の視線が彼らを包むだろう。
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