月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 レオナールの問いに、ルーベンははっとしたように唇を引き結ぶ。
 人々は息をすることも忘れたようにふたりを見つめていた。
 その沈黙の中で、ルーベンの表情にはっきりとした悔しさの色が浮かぶ。
 この場を支配していたるのは、もはや王ではなかった。老いた弟を見下していた王が、若き夜の王に光を奪われている。
 音楽も言葉も響かないまま、レオナールの声だけが大広間に響いた。

 「兄上。今宵の祝宴、どうか穏やかに終わることを願っています」

 その声音には皮肉も怒りもなく、ただ静かな威厳だけがあった。
 しかし、ルーベンの拳は玉座の肘掛けの上で震えていた。
 しばらくすると、思い出したかのように楽師の奏でる音が再び大広間を満たしはじめた。
 琥珀色の光がシャンデリアから滴り落ち、金と白の装飾が春の夜気に溶けていく。王座に座るルーベンのもとへは、次々と杯が捧げられた。
 国王指揮のもと魔法騎士団が王都を襲った魔獣を討伐した。その功績を称える宴だと、誰もが声を揃えて祝福する。
 だが、拍手の音はどこか乾いていた。その裏で囁きが絶え間なく聞こえてくる。

 「……あれが、夜の王子」
 「昼とはまるで別人だ……」
 「呪いを受けたと聞いたが、なんと気高い」
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