月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 ***

 宮殿の庭園は混乱していた。黒い瘴気に覆われている。
 咆哮が夜空を裂き、瓦礫の上に魔獣の影が蠢いていた。

 「下がれ!」

 レオナールが一声放つ。
 近衛たちは彼の周囲を空ける。
 次の瞬間、大地が震えた。
 レオナールの足もとから光の陣が広がる。青白い魔法陣が空気を裂き、圧倒的な魔力の奔流が溢れ出た。

 「アーク・レイ!」

 彼の詠唱とともに、天空から光の槍が次々と降り注ぐ。魔獣たちが断末魔の声を上げ、黒煙とともに弾け飛んだ。
 ひとつ、またひとつ、続々と現れる異形の影を、剣と魔法の両方で薙ぎ払っていく。
 刃が閃き、光が奔り、黒い血が宙に散る。そのすべての動きが、まるで舞のように滑らかだった。
 夜風が髪をなびかせ、剣の銀が闇を裂く。
 しかし次の瞬間、背後で轟音が響き渡った。
 砕けた扉の破片が宙を舞い、悲鳴が夜空を引き裂く。黒い瘴気とともに、魔獣の影が宮殿の中へと雪崩れ込んだのだ。

 「なんだと!?」

 近衛たちが剣を抜くが、次々と吹き飛ばされる。
 ルーベンは玉座の前で蒼白になり、バネッサが震える声を上げた。
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