月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 剣が輝きを帯び、流星の軌跡を描いて魔獣の胸を貫く。閃光とともに黒い血が弾け、巨体は崩れ落ちた。

 「エミリア!」
 「だ、大丈夫……です!」

 彼女は息を震わせながらも、シルバを抱きしめる。
 しかし安堵の間もない。べつの方向から濁った咆哮が響き渡った。
 ルーベンの王座の背後から、もう一体が襲いかかる。

 「やめろっ!」

 ルーベンが叫ぶが、遅い。魔獣の牙が彼の足を噛み砕いた。
 血が赤く飛び散り、王の悲鳴が夜を貫く。

 「陛下‼」

 バネッサが絶叫する。
 その瞬間、光が走った。
 レオナールの剣が一直線に閃き、魔獣の頭部を斬り裂く。断末魔とともに、獣の体は灰のように崩れ落ちた。
 静寂が訪れ、ただレオナールの呼吸だけが響く。
 剣先から滴る光が床に落ちると、その跡から春の花のような淡い輝きが広がっていった。
 先ほどまでの咆哮と悲鳴が嘘のように、空気が凍りついている。焦げた匂いと血の匂いが入り混じり、青白い煙がゆらゆらと天井へ昇っていく。
 レオナールは剣を下ろしたまま、微動だにしなかった。
 足もとで崩れた魔獣の残骸が、闇に溶けるように消えていく。
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