月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「……っ! 治療師を呼べ!」

 王の叫びが虚しく響く。
 彼女の体は沈黙の中。もうなんの反応もなかった。
 その夜、アルフォンスは決断した。
 レオナールを北の果て、ミカエル領の古城へと匿うこと。呪いを解く手がかりが見つかるその日まで――。
 そして息子の身に降りかかる運命を、誰の目からも遠ざけるために。
 彼は人払いをした部屋の奥で、眠るレオナールの頬に手を置き、ただひとこと呟いた。

 「許せ……おまえは私に似すぎた。ゆえに、神はおまえを選んだのかもしれぬ……」

 月明かりが差し込み、少年の面影がわずかに戻る。
 母の祈りが残した光が、彼の胸に淡く宿っていた。
 その力によってレオナールは完全な異形とならず、一日の半分だけ本来の姿に戻れるようになったのだ。
 いつしか、人々の間でこう囁かれるようになる。
 〝夜になると、呪われた王子は姿を変える。あまりに美しいその姿を見た者は、心を奪われるのだ〟
 それが、真実を覆い隠した最初の噂だった。
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