月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「ああ、案ずるな」

 エミリアが小さく息をつく。その後しばらくふたりは、窓辺で静かに朝の光を見ていた。
 城の外では鳥の声が聞こえ、爽やかな風が山を渡ってくる。
 やがてセルジュが扉を叩き、入室した。エミリアが一緒にいるのを見て目を瞬かせたが、すぐに穏やかな笑みを浮かべる。

 「殿下、失礼いたします。お客人がお見えです」
 「客人?」

 レオナールが眉を上げると、セルジュは恭しくうなずいた。

 「はい。王都よりお越しです。エリオット・ブラン卿。魔法騎士団の団長であられる方です」

 その名を聞いた瞬間、胸に懐かしい響きが蘇った。
 エリオット、かつてともに魔術と剣を学んだ友だ。歳も同じで、幼い頃にはルーベンよりも兄弟のように過ごした。
 祝宴の席で、遠くからこちらを見て微笑んでいた姿を思い出す。
 あの時の眼差しには敬意でも憐憫でもなく、再会の喜びが宿っていた。魔獣の討伐で騒ぎになり、言葉を交わさないまま王都を離れてしまったが。

 「そうか。あのエリオットが団長か」

 うなずきながら呟く。

 (まぁ、彼なら適任だろう。剣術も魔術も秀でていたからな)
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