月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「たしかに姿は違うが、内面から滲み出る気品は隠しきれていない」
 「気品とは便利な言葉だな。老いも隠してくれるとは」
 「隠すどころか、深めているよ」

 エリオットは静かに茶を口にした。その仕草は、かつての少年の面影をわずかに残している。

 「エリオットこそ立派になったじゃないか。騎士団長だと聞いたぞ」
 「いや、まだまだ未熟だよ。レオナールとともに学んできたことを、ようやく少しずつ理解しはじめたところといったところかな」

 その真摯な言葉に、レオナールは小さく目を伏せた。
 長い時を経ても、こうして変わらず敬意を向けてくる男がいる。そのことが胸を揺さぶられた。
 カップの縁から立ちのぼる湯気が、ゆらりと光を滲ませる。

 「あれから王都の様子はどうだ?」

 静けさを破るように、レオナールが問いかけた。
 祝宴の席で現れた魔獣は討伐したが、あの日以降はどうなのか。カーリンの噂話によると、それ以前にも現れて被害が出ていたと聞いている。
 エリオットの笑みに影が差す。

 「平穏とは言えない。祝宴で現れた魔獣は、王都の結界が弱まりつつある証と見ていいだろう」
 「やはりそうか」

 レオナールは低く呟いた。思っていた通りの答えだった。
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