月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 カーリンの声で我に返る。

 「あ、いえ、なんでもないわ」

 小さく微笑み返すが、胸の奥では警鐘が鳴っていた。
 治療を終えて外に出ると、空は薄く霞みがかっていた。朝の清々しい青ではない。どこか、灰を溶かしたような色だ。
 エミリアは胸の前で手を組み、遠くの山並みに目をやった。

 (レオナール様、どうか、ご無事で……)

 その祈りが届けられるかのように、風が頬を撫でた。
< 155 / 224 >

この作品をシェア

pagetop