月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「大丈夫よ、魔獣ではないのだから」

 エミリアは心の中で〝魔獣のほうがマシかもしれないわ〟と思いながら、カーリンの肩に手を置いた。

 「陛下はおひとりで応接室に?」

 歩きながら尋ねる。

 「おひとりです。護衛は屋敷の外に控えていますが」
 「そう、わかったわ」

 バネッサは連れてきていないようだ。
 護衛はつけているとはいえ、こんな僻地までどんな用件で来たのだろうか。

 「シルバ、この前のように体を小さくできる?」

 すぐ後ろを歩いていたシルバに問いかける。
 レオナールがいない今、エミリアを守れるのはシルバだけだ。
 言葉をすぐに理解したシルバの体が光に包まれる。そして次の瞬間、小さな銀の獣に変わった。ジャンプしてエミリアが羽織っているケープの中に忍び込む。

 「何度見てもすごい技ですよね」
 「本当に。おりこうね、シルバ」

 感心するカーリンに微笑みながらケープの上から撫でると、シルバはまるで猫のように喉をゴロゴロと鳴らした。
 応接室の扉をカーリンが開けると、ルーベンは背を向けて立っていた。深い青の外套の裾を払い、窓の外に視線を向けている。
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