月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「陛下……」

 エミリアは静かに頭を下げる。
 ルーベンは振り向き、目を見開いた。

 「……エミリア、お前の輝きは変わらぬな」

 声の奥に、深い後悔と空虚が混じっているのは気のせいか。
 エミリアはゆっくりと顔を上げ、形ばかりの微笑を浮かべた。

 「陛下にそのように言っていただけるとは、光栄です」
 「私が、どれほど愚かだったかを思い知らされる」

 ルーベンの声がわずかに震える。指先が外套の裾を強く握りしめているのが見えた。

 「どうか、少し話をさせてほしい」

 その言葉に、エミリアは小さく息を呑む。ルーベンが、なぜこの時を選んで来たのか、すぐに悟った。
 エリオットにレオナールを伴って結界の視察へ行くよう命じたのはルーベンである。つまり、レオナールがこの城にいないときを見計らってここへ来たのだ。
 だからといって、国王をこの場で追い返すわけにはいかない。

 「承知しました。……では、お掛けください」

 エミリアは静かに一礼し、ソファを指し示した。
 ルーベンはゆっくりと腰を下ろし、顔を両手で覆う。その姿は王ではなく、罪を負ったひとりの男のように見えた。
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