月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 「陛下」

 エミリアの声が、静かに鋭くなる。

 「私は、すでにレオナール様の妻です」

 その瞬間、ルーベンの表情が凍りついた。

 「だからどうだというのだ」
 「妃にはなれません。私自身、そうしたいとも思いません」
 「私を誰だと思っている。モルテン王国の王だぞ! そんなもの、私が認めなければ成り立たぬだろう。王の命に逆らえる者など、この国におるまい」

 ルーベンが声を荒げる。
 その傲慢さに、エミリアの中でなにかが静かに切れた。

 「王の命で愛は縛れません。陛下がどんなに望まれても、私は戻りません」
 「どうしてだ! あの男は呪われた身だぞ。老いた姿で、もう長くは生きられまい。それでもお前は、あの化け物のそばにいるというのか!」

 エミリアの瞳が鋭く光る。

 「陛下、お言葉をお慎みください。レオナール様こそが私の支えです。王であろうと、誰にもその絆は壊せません」

 たとえ形式上の夫婦であっても、心はひとつだとエミリアは信じている。
 ルーベンは苛立ちを隠せず立ち上がり、机に手を叩きつけた。
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