月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 神官や聖女でなければ完全な修復は無理だろう。
 ふたりはしばらく黙って結界の光を見つめた。
 闇の中でぼんやりと揺らめく魔法陣は、消えかけた灯を無理やり繋ぎ止めたような儚を帯びていた。
 レオナールが遠くの山を見やる。その先に自らの居城がある。
 胸の奥に、なぜか嫌な予感が広がっていく。

 「……城へ戻ろう」
 「城へ?」
 「エミリアが心配だ。妙に胸騒ぎがする」

 風が再び吹き抜け、さっきまで沈んでいた空が穏に低く唸る。

 「馬を一頭借りたいのだが」

 馬車で戻るより馬を走らせたほうが速い。ここへ来るまでは老体だったため馬には乗れなかったが、夜の間ならむしろ馬のほうがいい。
 馬車は二頭の馬が引いているが、人を乗せなければ一頭でも十分だろう。御者に任せて、城へ急ぎたかった。

 「もちろんだ」

 快く賛同したエリオットに礼を言い、颯爽と馬に跨る。

 「行くぞ、エリオット」

 腹を軽く蹴り、急ぎ城へ向かった。
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