月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
 その魔術師は隣国からバネッサが秘密裏に呼び寄せた者。四方を魔獣に囲まれたモルテン王国に無傷で入れた魔術師秘伝の魔法さえあれば――。

 「聖女の力を反転させる術……これで私のものにできるのね」

 この術をある場所で使えば、劇的な効果が期待できるだろう。

 (――そう〝あの部屋〟でね)

 ルーベンがひたすら隠し通してきた地下の部屋。そこはルーベンの呪いで瘴気にまみれ、バネッサが使おうとしている術にはもってこいである。

 (陛下ってば、私がなにも知らないと思っているんだから呆れるわ。だけど実の弟を呪いにかけるなんてね。まぁ、あれだけ力の差があれば嫉妬するのも無理はないけど)

 祝宴でレオナールが魔獣と颯爽と戦う姿を思い返し、バネッサは鼻をふふんと鳴らした。
 ルーベンが魔法騎士団のエリオットに、レオナールとともに結界の視察に向かうよう命令してくれたおかげで、ミカエル領の城には邪魔なレオナールは不在。その隙を狙えば、エミリアを連れ去ることはたやすいだろう。

 (陛下も、あの男が不在のうちにあの女に会いに行ったようだけど。どうせ〝王妃として戻ってきてほしい〟とか縋っているに違いないわ。本当に情けない)

 そんな国王など、もう必要ない。モルテン王国は王妃バネッサのもと、これから繁栄していくのだ。
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