月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
ルーベンとは二つ離れた弟と聞くから、本来の年齢は二十一歳だ。
「お初にお目にかかります。私は、陛下の命により――」
「聞いている。王都を追われた元妃だな」
膝を折って挨拶をしたが、彼が遮る。
胸の鼓動が早まった。自分でも理由はわからないが、彼の声が思いのほか穏やかだったからかもしれない。
「……はい。正式に離縁状をいただきました」
「そうか」
彼の反応に、小さくうなずく。〝追われた〟という響きが鋭く胸に刺さった。
火の爆ぜる音だけが部屋を満たす。
長い沈黙のあと、老王子は静かに問いかけた。
「怯えてはいないのか。呪われた王子のもとに嫁ぐことを」
怯えていない、と言い切るには少し勇気がいった。
しかし彼の目には邪悪なものはなにひとつない。むしろ清らかな光が見えた気がした。
「恐ろしくは、ありません」
「なぜだ?」
「殿下の目が……嘘を言わない方のものだからです」
その瞬間、彼の瞳がかすかに揺れた。
暖炉の光がその表情を照らす。老いの陰の奥に、ほんのわずかに人間らしい痛みの色が滲んでいた。
「お初にお目にかかります。私は、陛下の命により――」
「聞いている。王都を追われた元妃だな」
膝を折って挨拶をしたが、彼が遮る。
胸の鼓動が早まった。自分でも理由はわからないが、彼の声が思いのほか穏やかだったからかもしれない。
「……はい。正式に離縁状をいただきました」
「そうか」
彼の反応に、小さくうなずく。〝追われた〟という響きが鋭く胸に刺さった。
火の爆ぜる音だけが部屋を満たす。
長い沈黙のあと、老王子は静かに問いかけた。
「怯えてはいないのか。呪われた王子のもとに嫁ぐことを」
怯えていない、と言い切るには少し勇気がいった。
しかし彼の目には邪悪なものはなにひとつない。むしろ清らかな光が見えた気がした。
「恐ろしくは、ありません」
「なぜだ?」
「殿下の目が……嘘を言わない方のものだからです」
その瞬間、彼の瞳がかすかに揺れた。
暖炉の光がその表情を照らす。老いの陰の奥に、ほんのわずかに人間らしい痛みの色が滲んでいた。