月夜の呪われ王子と追放王妃~力のない聖女などいらないと厄介払いしたのをお忘れですか? 辺境の地で幸せを掴みましたので、今さら謝られても戻りません
「ようこそ、エミリア。あなたがここへ来るのを、ずっと待っていたわ」
バネッサが微笑む。その瞳の奥には、狂気にも似た歓喜が宿っていた。
エミリアをここへ連れ去るよう命じたのはバネッサだったのだ。
祝宴の席で会ったときとは、人相がまるで違う。なにかに憑りつかれているような顔だ。
エミリアは息を詰めたまま、バネッサを見つめた。
深紅のドレスの裾が石床を引きずり、その音がいやに響く。
灯りも乏しい地下の空間にあって、その姿は血のように鮮やかだった。
「どうして……私をここに?」
震える声をどうにか抑え、毅然と問う。
バネッサはゆっくりと微笑んだ。
「どうして、ですって? あなたが聖女だからよ」
意図が掴めず、エミリアは言葉を返せない。
「意味がわからないかしら。あなたを聖女の座から引きずり下ろすのよ」
「……そんなこと、できないわ」
聖なる魔力の保持はもとより、厳しい教育と儀式を経た者にしか聖女としての位は授けられない。
「神殿との関係を断ち切った今、形ばかりの位なんて関係ないのよ。それに、あなたは知らないでしょうね。秘伝の黒魔術を使ってあなたの力を私に反転させるの。そうして、この国を私の手中に収めるのよ」
バネッサが微笑む。その瞳の奥には、狂気にも似た歓喜が宿っていた。
エミリアをここへ連れ去るよう命じたのはバネッサだったのだ。
祝宴の席で会ったときとは、人相がまるで違う。なにかに憑りつかれているような顔だ。
エミリアは息を詰めたまま、バネッサを見つめた。
深紅のドレスの裾が石床を引きずり、その音がいやに響く。
灯りも乏しい地下の空間にあって、その姿は血のように鮮やかだった。
「どうして……私をここに?」
震える声をどうにか抑え、毅然と問う。
バネッサはゆっくりと微笑んだ。
「どうして、ですって? あなたが聖女だからよ」
意図が掴めず、エミリアは言葉を返せない。
「意味がわからないかしら。あなたを聖女の座から引きずり下ろすのよ」
「……そんなこと、できないわ」
聖なる魔力の保持はもとより、厳しい教育と儀式を経た者にしか聖女としての位は授けられない。
「神殿との関係を断ち切った今、形ばかりの位なんて関係ないのよ。それに、あなたは知らないでしょうね。秘伝の黒魔術を使ってあなたの力を私に反転させるの。そうして、この国を私の手中に収めるのよ」